交通整理とは、警察官と交通巡視員だけが行える、手信号などで交通をさばく行為のことです。信号機よりも優先されます。
工事現場で旗を振っている人を思い浮かべた方も多いと思いますが、あれは交通整理ではありません。交通整理は道路交通法で行える人が決められていて、その手信号は青信号よりも強い。つまり目の前の信号が青でも、警察官が「止まれ」の合図をしていたら止まらなければいけません。この記事では、その手信号をどう読むのか、信号機が消えた交差点でどう動けばいいのか、従わなかったらどうなるのかを、道路を通る側の目線でまとめます。
現場からの一言
交通誘導で現場に立っていると、信号機のある交差点で警察官が手信号を出し始めたとたん、運転者の方が迷って中途半端な位置で止まってしまう場面によく出くわします。青信号と手信号のどちらに従えばいいのか、その場で判断がつかないのだと思います。株式会社FAIRセキュリティの警備員も、そういうときは自分の誘導をいったん止めて誘導棒を下ろし、視線と体を警察官の方へ向けるようにしています。誰の合図を見ればいいのかを迷わせないことが、結局いちばんの安全確保につながると感じています。
— 株式会社FAIRセキュリティ 副社長・古川 友之
目次
この記事でわかること
運転中や歩行中に交通整理に出くわしたとき、その場で迷わないための3点です。
- 警察官の手信号の読み方(腕の位置ではなく体の向きで判断する)
- 信号機が青でも手信号のほうが優先される、法律上のはっきりした理由
- 従わなかったときの反則金と点数、そして目の前の相手が警察官か警備員かの見分け方
交通整理とは?できるのは警察官と交通巡視員だけ
交通整理とは、警察官と交通巡視員が手信号などで交通をさばくことです。道路交通法第6条第1項が「警察官又は……交通巡視員(以下「警察官等」という。)は、手信号その他の信号……により交通整理を行なうことができる」と定めていて、この2つの立場の人以外は交通整理をできません。行われるのは、事故が起きた交差点、災害や停電で信号機が止まったとき、大きなイベントで人と車があふれるときなど、機械の信号だけでは危ないと判断された場面です。
工事現場で誘導棒を振っている警備員がやっているのは、交通整理ではなく「交通誘導」です。名前は似ていますが、法律上の位置づけがまったく違います。誰が何をできるのか、工事のときにどちらを頼むのかは別の記事にまとめてあるので、発注する側の話が知りたい方はそちらをどうぞ(交通整備とは?交通整理・交通誘導との違いと工事現場での頼み方)。
交通巡視員とは?警察官とできることの違い
交通巡視員は、道路交通法第114条の4に基づいて都道府県警察に置かれている職員です。警察官ではありませんが、手信号による交通整理はできます。つまり交通巡視員の手信号も、信号機より優先されます。ここは意外と知られていません。
警察官との違いは、担当する範囲と持っているものです。
- 身分: 警察官以外の警察職員のうちから、警察本部長が命じます
- 担当する事務: 歩行者や自転車の通行の安全確保、停車・駐車の規制、道路の交通の安全と円滑にかかわる指導など
- 持たないもの: 犯罪の捜査を行う立場ではないため、拳銃・警棒・手錠は携帯しません
- 見た目: 制服の胸に階級章ではなく「交通巡視員章」を着けています
ただし、道を通る側が現場で見分ける必要はありません。手信号に従う義務はどちらでも同じだからです。「あの人は警察官じゃないから従わなくていい」は成り立ちません。
警察官の手信号の読み方|止まれ・進め・注意
読み方はとてもシンプルです。警察官の正面か背中が自分に向いていたら赤(止まれ)、体の横が見えていたら青(進める)。判断の軸は腕ではなく、自分から見て警察官がどちらを向いているかです。そのうえで腕の位置を見ます。腕が水平なら、横が見えている側は青。腕が垂直に上がったら、それまで進めていた側が黄色に変わる合図です。
| 自分から見た警察官 | 腕を水平に上げている | 腕を垂直に上げている |
|---|---|---|
| 正面か背中が見えている(対面する交通) | 赤信号と同じ/止まる | 赤信号と同じ/止まる |
| 体の横が見えている(平行する交通) | 青信号と同じ/進める | 黄信号と同じ/止まれるなら止まる |
覚え方はこれだけです。「正面と背中は赤、横顔は青」。腕が垂直に上がったら「青だった側が黄色になった」と読み替えます。赤だった側は、腕が上がっても赤のままです。
夜間や雨で視界が悪いときは、腕ではなく赤色の灯火(誘導灯)で合図することがあります。意味は道路交通法施行令第5条で決まっていて、灯火を横に振っている方向は青、その方向と交差する側は赤。灯火を頭上に上げたら、それまで振っていた方向が黄色に変わる合図です。腕の場合と考え方は同じで、「動いている方向が通れる側」と覚えておくと迷いません。
いちばん迷う「背中を向けた警察官」の読み方
背中を向けられていると、見られていないから進んでいい、と感じてしまいがちですが逆です。背中側も「対面する交通」として扱われ、赤信号と同じ意味になります。手信号は、警察官が体をどちらに開いているかで通す方向を作っています。開いている方向(横)が通れる側、閉じている方向(正面と背中)が止まる側、という左右対称の仕組みです。背中が見えたら止まる、と体で覚えてしまうのがいちばん安全です。
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信号が青でも手信号が優先されるのはなぜ?
信号機の青と警察官の手信号がぶつかったら、従うのは手信号です。理由は法律にはっきり書いてあります。道路交通法第6条第1項の後段が、警察官等は「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため特に必要があると認めるときは、信号機の表示する信号にかかわらず、これと異なる意味を表示する手信号等をすることができる」と定め、第7条が「道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等……に従わなければならない」と定めているためです。
なぜそうなっているのか。信号機は決められた順番で色を変えているだけで、いま目の前で何が起きているかを見ていません。事故で車線がふさがっている、水没している、停電で反対側の信号だけが消えている——こういう場面で機械の順番どおりに車を流すと、かえって危ない。だから現場を見ている人間の判断を、機械の上に置くという設計になっています。
青信号で進んで事故になっても、「信号は青でした」は理由になりません。手信号が出ている交差点では、信号機はいったん無いものとして、人の合図だけを見るくらいでちょうどいいです。
信号機が消えた交差点で実際に起きること
停電や災害、機器の故障で信号機が消えると、交差点は2段階で扱いが変わります。警察官や交通巡視員が来て手信号を出していれば、それが信号のかわりです。誰も立っていなければ、「信号機のない交差点」として道路交通法の一般ルールに戻ります。
- 交差する道路が優先道路なら、そちらの車の進行を妨げない
- 優先道路でなくても、交差する道路のほうが道幅が明らかに広ければ、そちらが優先
- どちらでもなければ、左から来る車が優先(左方優先)
- 左右の見通しがきかない交差点では徐行する
実際の現場では、この順番を思い出す前に相手の車が動いてしまいます。大きな停電のときほど、譲り合いと目線の確認が効きます。歩行者用の信号も同時に消えているので、横断してくる人が見えているかどうかも合わせて確認してください。
指示に従わなかったらどうなるのか
警察官等の手信号を無視すると、信号無視と同じ扱いになります。第7条の「従わなければならない」に反することになるからです。反則金と違反点数は、信号機の赤信号を無視したときと同じ枠で処理されます。
- 違反点数: 2点
- 反則金(赤色等): 大型車12,000円/普通車9,000円/二輪車7,000円/原付車6,000円
- 反則金(点滅): 大型車9,000円/普通車7,000円/二輪車6,000円/原付車5,000円
反則金を期限までに納めれば刑事罰にはなりませんが、納めない場合や悪質な場合は刑事手続きに進み、道路交通法の罰則(3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金)の対象になります。
一方、工事現場の警備員の誘導は道路交通法に基づく命令ではないので、従わなかったこと自体が違反になるわけではありません。ただし、それで事故が起きたときの責任は別の話です。工事現場側の許可や責任の分かれ目は、交通誘導警備を頼む前に|道路使用許可・事故の責任・中止料の決まりにまとめています。
目の前にいるのは警察官?警備員?見分け方と権限の違い
いちばん確実な見分け方は服装です。警備員の服装は、警察官などの制服と「色、型式又は標章により、明確に識別することができる」ものにすることが警備業法第16条で義務づけられています。しかも、その服装は都道府県の公安委員会に届け出ています。警察官に似せることが法律で禁じられているので、「警察官に見えるなら警察官」と考えて基本的に間違いありません。
- 警備員: 会社名の入った制服、腕章、反射材のベスト、ヘルメット、赤い誘導棒。立っている場所は工事現場・建物の出入口・駐車場・イベント会場
- 警察官・交通巡視員: 制服に階級章または交通巡視員章。近くにパトカーや白バイ、標識車がいることが多い。立っている場面は事故処理・信号故障・災害・大規模な催し
見分ける実益は、権限がまったく違うところにあります。警備業法第15条は「警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意する」と定めています。つまり警備員には、道路の通行を止める法律上の権限はありません。現場で出している合図は、命令ではなく協力のお願いです。
権限があるかどうかと、従ったほうがいいかどうかは別の話です。警備員は、運転席からは見えない場所を見ています。バックしてくるダンプ、掘り返したばかりの路肩、建物の陰から出てくる歩行者。義務がなくても、その合図に乗ったほうが結果的に速く、安全に通れます。
よくある質問
- Q. 信号が青なのに警察官が「止まれ」の合図をしています。どちらに従えばいいですか?
- A. 警察官の手信号です。道路交通法第6条第1項で、警察官等は信号機の表示にかかわらず異なる意味の手信号ができると定められ、第7条で通行者は信号機の信号または警察官等の手信号に従う義務があるとされています。青信号のまま進んで事故になっても、「青だったから」は理由になりません。手信号が出ている交差点では、人の合図だけを見てください。
- Q. 警察官が背中を向けて腕を水平に上げています。進んでいいですか?
- A. 止まってください。手信号は、警察官の正面と背中の側が赤信号、体の横が見えている側が青信号と同じ意味です。背中を向けられていると見られていない気がしますが、赤と同じ扱いになります。腕が垂直に上がったときも、正面と背中の側は赤のままで変わりません。「正面と背中は赤、横顔は青」と覚えるのが確実です。
- Q. 交通整理と交通誘導は何が違うのですか?
- A. 行う人と、法律上の強さが違います。交通整理は警察官と交通巡視員が道路交通法に基づいて行うもので、従わないと信号無視になります。交通誘導は警備会社の警備員が工事現場などで行うもので、法律上の命令ではなく協力のお願いです。行われる場面も、事故や災害や信号故障と、工事やイベントとで分かれています。
- Q. 停電で信号機が消えている交差点は、どう通ればいいですか?
- A. 警察官や交通巡視員が手信号を出していれば、それに従います。誰もいなければ「信号機のない交差点」として扱い、交差する道路が優先道路ならそちらが優先、道幅が明らかに広ければそちらが優先、どちらでもなければ左から来る車が優先です。見通しがきかない交差点では徐行してください。歩行者用の信号も消えている点に注意が必要です。
- Q. 警備員の誘導を無視したら違反になりますか?
- A. 誘導を無視したこと自体が道路交通法違反になるわけではありません。警備業法第15条が、警備員には法律で特別な権限が与えられていないと定めているためです。ただし、警備員は運転席から見えない範囲まで見て合図を出しています。無視して事故が起きれば、その責任は運転者側にも問われます。義務の有無と、安全かどうかは別の問題です。
まとめ
交通整理は、警察官と交通巡視員だけができる行為で、その手信号は信号機より優先されます。持ち帰っていただきたいのは次の4つです。
- 正面と背中は赤、横顔は青。腕が垂直に上がったら、青だった側が黄色になる
- 青信号と手信号が食い違ったら手信号が勝つ(道路交通法第6条第1項・第7条)
- 従わなければ信号無視と同じ扱い。違反点数2点、普通車の反則金9,000円
- 工事現場の警備員の誘導には法律上の強制力はないが、見えていない危険を見ているので従ったほうが安全
次に信号のある交差点で警察官が立っているのを見かけたら、まず体の向きを見てください。それだけで、止まるか進むかは判断できます。工事を発注する側として交通整理と交通誘導の使い分けを知りたい方は交通整備とは?交通整理・交通誘導との違いと工事現場での頼み方、現場で警備を頼む前の手続きと責任の分担を知りたい方は交通誘導警備を頼む前に|道路使用許可・事故の責任・中止料の決まりもあわせてどうぞ。
出典
- 道路交通法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
- 道路交通法施行令(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/335CO0000000270
- 警備業法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117
- 警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/tetsuzuki/hansoku.html
- 佐賀県警察「警察官による手信号の意味」https://www.police.pref.saga.jp/koutsu/jikoboshi/_2358.html
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