交通誘導警備は、工事現場や道路で人と車の事故を防ぐために置く、警備業法の「2号業務」です。道路の上で工事をするなら、警察署に出す道路使用許可の条件として「警備員を配置すること」が付いてくることが多く、許可の手続きと警備員の手配はひと続きの話になります。
ただ、いざ頼む段になってつまずくのは、料金より先にこのあたりではないでしょうか。「許可はうちが取るの? それとも警備会社?」「もし事故が起きたら、誰が責任を取るの?」「雨で中止になったら、お金はかかるの?」。
この記事では、その3つだけを、警備業法・道路交通法・道路法の条文にあたって整理しました。働く人向けの話ではなく、頼む側が契約前に確かめておくことに絞っています。
目次
現場からの一言
道路の工事で、許可の条件に「警備員を配置すること」と書かれていたことに直前になって気づき、慌ててご連絡をいただくことがあります。人手に余裕があれば急ぎでも間に合うことはありますが、資格を持った警備員が必要な道路だと、そう簡単にはいきません。逆に、日程だけ先にご相談いただいて、許可の条件が決まってから人数を確定していく進め方だと、ほとんど揉めずに終わるケースが多いです。許可の手続きと警備員の手配は別々の話に見えて、実はひと続きなのだと感じています。
— 株式会社FAIRセキュリティ 副社長・古川 友之
この記事でわかること
- 道路使用許可は誰が・いつ・どこに出すのか。警備員の手配とどちらを先にするのか
- 事故が起きたとき費用を負担するのは誰か。保険と労災はどこを見て確かめるのか
- 悪天候や工期の変更で中止するとき、いつまでに連絡すれば中止料がかからないのかの考え方
交通誘導警備とは?警察官の交通整理と何が違うのか
交通誘導警備は「交通整理」ではありません。手信号などで交通整理ができるのは警察官と交通巡視員だけで、警備員の誘導に法的な強制力はないんです。ここを最初に押さえておくと、人数や計画の考え方が変わってきます。
まず法律上の位置づけです。警備業法は警備業務を4つに分けています。1号が建物などを守る施設警備、2号が交通誘導と雑踏警備、3号が現金や貴金属を運ぶときの警備、4号が人の身辺を守る警備です。交通誘導はこのうちの2号にあたり、条文では「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」と書かれています(警備業法第2条第1項第2号)。
さらに国家公安委員会規則では、このうち「工事現場その他人又は車両の通行に危険のある場所」で「交通の誘導に係るもの」を交通誘導警備業務と定義しています。「道路の上だけ」と思われがちですが、条文は場所を道路に限っていません。資材置き場や大型商業施設の駐車場のように、私有地でも車と人が行き交って危ないところは交通誘導警備の対象になります。
つまり、法律が警備員に求めているのは「さばくこと」ではなく「事故を防ぐこと」。ここが警察官との決定的な違いです。道路交通法第6条で交通整理ができるのは警察官と交通巡視員と決められているので、警備員が出すのは指示ではなく、危険を知らせて安全な通り方をお願いする合図なんですね。
ここだけは覚えて帰ってください
警備員の誘導に、ドライバーが従う法的な義務はありません。従わない車がいる前提で計画を組むのが正解です。見通しの悪い場所では人数を足す、カラーコーンや看板といった保安施設を厚くする——そういう発想になります。「警備員を1人置いたから大丈夫」ではないんです。
交通誘導・雑踏・施設、どの区分で頼めばいい?
問い合わせのときに区分を伝えると、話が一気に早くなります。同じ「警備」でも、区分が違うと必要な資格も計画の立て方も変わるからです。
| 頼みたい場面 | 頼む区分 |
|---|---|
| 道路工事・建設現場の車両出入口・片側交互通行 | 交通誘導警備(2号) |
| お祭り・花火大会・イベント会場など、人の流れの整理 | 雑踏警備(2号) |
| 建物の受付・巡回・出入りの管理 | 施設警備(1号) |
工事現場の敷地内で車をさばいてほしい、というご相談も交通誘導警備で受けられます。逆に、イベント会場の来場者を誘導したいのに「交通誘導で」と伝えると、当日の計画がかみ合わないことがあります。ざっくりでいいので、「動かすのは車か、人か」で区分を選んでみてください。誘導員の呼び方や役割の違いは誘導員とは?種類ごとの役割と必要な現場でも整理しています。
道路使用許可と警備員の手配|申請は誰が・いつ出すのか
結論から言うと、道路使用許可を出すのは工事や作業をする側で、警備会社ではありません。提出先はその場所を管轄する警察署長です。警備員の手配は、この許可と並行して進めることになります。
根拠は道路交通法第77条第1項第1号。「道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」が所轄警察署長の許可を受けなければならない、と定められています。発注者なのか施工者なのかは契約のかたちによりますが、いずれにせよ道路を使う側です。
ここで押さえておきたいのが同条第3項です。所轄警察署長は、許可に「交通の安全と円滑を図るため必要な条件」を付けることができます。この条件として「交通誘導員を◯人配置すること」「片側交互通行とすること」「作業は◯時から◯時まで」といった内容が付いてくるわけです。
つまり、正確な人数は許可の条件が決まってから確定するのが本来の順番。でも警備員は前日にポンと湧いてくるものではないので、実務では次のように進めるとうまくいきます。
- 工事の日程と車線規制の内容を決める
- 警備会社に日程だけ先に仮押さえしてもらう(繁忙期は特に)
- 規制図をそえて警察署へ道路使用許可を申請する
- 許可の条件が決まったら、人数と時間を確定して正式に発注する
- 前日までに事前打合せ
申請の期限も気になるところだと思います。何日前までという全国共通の決まりはなく、警察署ごとに扱いが違います。混み合う時期は審査に時間がかかることもあるので、着手日が見えた時点で所轄の警察署に「いつまでに出せばいいですか」と一本確認しておくのが確実です。申請には、規制のしかたを図にした書類(保安施設の配置図)を求められるのが一般的で、ここに警備員を立たせる位置も描き込みます。人数の話が許可の話と切り離せないのは、このためなんですね。
なお、私有地の中だけで完結する作業に道路使用許可は要りません。ただし工事車両が公道に出入りするなら、出入口に誘導が必要になる場面がほとんどです。近隣から「危ない」と声が上がりやすいのもこの出入口なので、許可の要否とは別に、置くかどうかを決めておきたいところです。
もうひとつ、足場・仮囲い・工事看板のように「道路に物を置いて継続して使う」場合は、道路使用許可とは別に道路占用許可が必要です。こちらの許可を出すのは警察ではなく道路管理者で、根拠は道路法第32条。同条第4項では占用許可の申請書を警察署長を経由して提出できると定められ、第5項では道路管理者があらかじめ警察署長に協議すると決められています。2つの許可は制度としてつながっているんですね。
2つの許可の見分け方
工事のために一時的に道路を使う → 警察署(道路使用許可・道路交通法第77条)
道路に物を置いて継続して使う → 道路管理者(道路占用許可・道路法第32条)
足場を組んで道路上で工事をするなら、両方かかることもあります。
有資格者を置かないといけない道路がある
すべての現場で資格が要るわけではありませんが、法律で検定合格者の配置が義務づけられている道路があります。ここを知らずに直前で頼むと、手配がつかないことがあるんです。
警備業法第18条と、これを受けた国家公安委員会規則(警備員等の検定等に関する規則)第2条で、次の2つが定められています。
- 高速自動車国道・自動車専用道路での交通誘導警備業務
- 都道府県公安委員会が、道路における危険を防止するため必要と認めた道路での交通誘導警備業務(現場では「資格者配置路線」と呼ばれます)
どちらも、交通誘導警備業務の1級または2級の検定合格者を、業務を行う場所ごとに1人以上配置しなければなりません。対象になる道路は都道府県公安委員会が定めていて、各都道府県警が公表しています。ご自分で調べなくても、見積もりのときに現場の住所を伝えて「ここは資格者配置路線ですか?」と聞けば、警備会社が確認してくれます。
資格者が必要な現場は、当然その分だけ手配できる人が限られます。直前依頼が通りにくいのはこのタイプの現場だと思っておいてください。何人必要かの決め方は交通誘導の警備員は何人必要?現場別に配置の決め方で詳しく書いています。
お急ぎの方は、現場条件に合わせた無料見積もりの相談もご利用ください。
事故が起きたときの責任と、頼む会社の確かめ方
万一への備えは、契約の前に3つ見れば足ります。公安委員会の認定を受けた業者か、賠償責任保険に入っているか、契約書面に何が書いてあるか。この3つです。
まず認定から。警備業を営むには都道府県公安委員会の認定が必要で(警備業法第4条)、その有効期間は認定を受けた日から5年と決まっています(同第5条第4項)。期限が切れていないかも確認したいところです。
次に標識。警備業者は認定を受けたことを示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示し、あわせてインターネットでも公衆が閲覧できるようにすることが義務づけられています(同第6条)。つまり、会社のホームページで認定番号を確かめられるのが今の当たり前です。どこにも見当たらない会社には、一度たずねてみてください。
3つめが名義貸しの禁止です。「自己の名義をもつて、他人に警備業を営ませてはならない」と定められています(同第13条)。認定を持っている会社と、当日実際に現場へ来る会社が違うという形は法律で禁じられています。人が足りないときの応援体制も含めて、誰が来るのかは聞いておきましょう。
そして契約書面。警備業法第19条は、契約前に「契約の概要を書いた書面」を、契約後に「内容を明らかにする書面」を交付することを義務づけています。後者に書かれるのは次の内容です。
- 警備業務の内容
- 対価そのほか支払わなければならない金銭の額
- その支払いの時期と方法
- 警備業務を行う期間
- 契約の解除に関する事項
いちばん下の「契約の解除に関する事項」。実はここが、次に出てくる中止料の話につながります。
ここで一点、実務的なことを。契約を結ぶ前に概要を書いた書面が出てくるのは、サービスではなく法律上の義務です。急ぎの現場だと口頭とメールだけで当日を迎えてしまいがちですが、書面が一枚もないまま進む段取りには、一度立ち止まったほうがいいと思います。
あわせて見積書も、次の3つが分けて書かれているかを見てみてください。何人を、何時から何時まで、資格者を含むのか含まないのか。この3つが一式でまとめられていると、人数が増えたときや時間が延びたときに、いくら変わるのかが誰にも分からなくなります。
事故の費用は、誰が負担するのか
正直にお答えすると、一律の答えはありません。誰のどんな落ち度で起きたかによって変わります。ただ、整理のしかたは決まっています。
- 警備員の過失で第三者に損害が出た → 警備会社が加入する賠償責任保険が一次的な受け皿になります
- 工事そのものに原因があった → 元請・施工者側の責任と保険の範囲になります
- 警備員本人がケガをした → 警備員は警備会社に雇われている労働者なので、警備会社の労災保険で扱うのが基本です(頼んだ側の労災ではありません)
もちろん現場の状況によっては、元請と警備会社の双方に責任が及ぶこともあり、最終的には個別の事情で決まります。だからこそ、責任の切り分けと保険の補償範囲を、契約の前に書面で確かめておくことが唯一の予防策になります。「対人・対物それぞれの補償はどうなっていますか」と一言聞くだけで十分です。
頼んでから当日まで|流れ・当日の指示・中止のときの決まり
発注から当日までは、現地の確認 → 警備計画づくり → 事前打合せの3段です。そして当日、警備員に指示を出すのは警備会社です。ここを取り違えると、現場でも契約でも困ったことになります。
①頼んでから当日までの流れ
- 問い合わせ(日時・場所・規制の内容・想定人数を伝える)
- 現地の確認(車線数・交通量・歩行者・出入口・見通し)
- 見積もりと契約書面の受け取り
- 警備計画と配置の決定
- 前日までに事前打合せ(集合時間・服装・保安施設・雨天の扱い・連絡窓口)
- 当日
何日前に頼むべきかに決まりはありませんが、資格者が必要な現場・人数が多い現場・繁忙期は早いほど確実です。当日手配に対応する会社もありますが、そのときに選べる人は限られます。
この中でいちばん軽く見られがちなのが、前日までの事前打合せです。ここで詰めておくと当日の電話が減ります。決めておきたいのは、おおむね次のことです。
- 集合の時刻と場所(現場が広いときは、どの門から入るのか)
- 作業の内容と、車がいちばん多くなる時間帯
- 片側交互通行にするのか、全面通行止めにするのか
- カラーコーンや看板を用意するのは工事側か警備会社か
- 雨天のときの判断と、その連絡先・連絡時刻
- 近隣や通学路への配慮が必要な時間帯があるか
②当日、警備員は誰の指示で動くのか
警備員に業務の指示を出すのは、雇い主である警備会社(現場の警備責任者)です。頼んだ側や元請が警備員へ直接、細かい作業指示を出し続ける形は請負の枠を外れてしまい、働かせ方として問題になるおそれがあります。
「配置を変えてほしい」「時間を延ばしたい」といった当日の変更は、警備会社の窓口か現場の警備責任者に伝えてください。そのうえで、延長や増員のように後から金額に影響することは、その場で誰の判断か決めておくと後がスムーズです。
中止料はどうやって決まるのか
中止料に法律の決まりはありません。決めているのは契約書です。だからこそ警備業法第19条第2項で「契約の解除に関する事項」を書面に書くことが義務づけられているんですね。ここを読まずに口約束で頼むのが、いちばんもめます。
契約の前に確かめておきたいのは、この4点です。
- 何日前・何時までの連絡なら中止料がかからないのか
- 前日の連絡・当日朝の連絡・警備員が現場に着いてからの連絡で、それぞれ扱いがどう変わるのか
- 「順延」(別の日に振り替え)と「中止」(取りやめ)で扱いが違うのか
- 雨天決行か中止かを、誰が・いつ判断するのか
台風や大雪は、工事の都合だけでなく警備員の安全の問題でもあります。早めに決めて早めに伝えることが、結果として費用も抑えます。工期が延びたときも同じで、期間を延ばすのか、いったん切って組み直すのかで請求のしかたが変わります。分かった時点で相談してください。
もめないためのひと工夫
「中止の連絡先」と「何時までに連絡するか」を、契約のときに1行だけ決めておく。これだけで、雨の朝の電話がぐっと楽になります。費用の内訳そのものは交通誘導警備の料金相場|費用の内訳と依頼の流れにまとめています。
よくある質問
- Q. 道路使用許可は警備会社が取ってくれますか?
- A. 道路使用許可を申請するのは、道路で工事や作業をする人、またはその請負人だと道路交通法第77条第1項で決まっています。警備会社が申請者になることはありません。ただし許可の条件として警備員の配置を求められることが多いので、規制のかたちを警備会社と相談しながら申請の準備を進めるのが実務的です。
- Q. 警備員の誘導に、車は必ず従わないといけませんか?
- A. 法的な強制力はありません。手信号などで交通整理ができるのは警察官と交通巡視員だけで(道路交通法第6条)、警備員の誘導はあくまで安全のためのお願いです。従わない車がいる前提で、余裕のある人数と保安施設を組むことが、そのまま事故防止につながります。
- Q. 資格を持った警備員を置かないといけない現場はありますか?
- A. あります。高速自動車国道と自動車専用道路、それに都道府県公安委員会が道路の危険を防ぐため必要と認めた道路では、交通誘導警備業務の1級または2級の検定合格者を、業務を行う場所ごとに1人以上置く必要があります(警備業法第18条ほか)。現場が該当するかは警備会社が調べられます。
- Q. 事故が起きたら、費用は頼んだ側が負担するのですか?
- A. 誰のどんな落ち度で起きたかによります。警備員の過失で第三者に損害が出た場合は警備会社の賠償責任保険が受け皿になり、警備員本人のケガは雇い主である警備会社の労災保険で扱うのが基本です。工事そのものに原因があれば施工者側の責任になります。契約前に保険の内容を書面で確認してください。
- Q. 雨で中止したら中止料はかかりますか?
- A. 法律の決まりはなく、契約の内容しだいです。警備業法第19条で契約の解除に関する事項を書面に記載することが義務づけられているので、何日前までの連絡なら費用がかからないか、当日連絡はどう扱うかはそこに書かれています。順延と中止で扱いが違うこともあるため、契約のときに確認しておくと安心です。
まとめ
交通誘導警備を頼む前に押さえておくことは、3つに絞れます。
- 道路使用許可を出すのは工事をする側(またはその請負人)で、提出先は所轄の警察署長。許可の条件として警備員の配置が付くので、日程だけ先に押さえ、条件が決まってから人数を確定するのが安全です
- 事故の責任は、誰の落ち度かで変わる。警備会社の賠償責任保険と労災の扱いを、契約前に書面で確かめておきます
- 中止料に法律の決まりはなく、契約書に書いてある。何日前までの連絡なら無料か、順延と中止で違うのかを、契約のときに確認します
ご相談の前に、現場の住所・日程・車線規制の内容・想定人数をメモしておくと、1回のやり取りでおおよそ決まります。会社選びの見方は地域の警備会社の探し方と選び方もあわせてどうぞ。
【出典】警備業法(e-Gov法令検索)/道路交通法(e-Gov法令検索)/道路法(e-Gov法令検索)/警備員等の検定等に関する規則(e-Gov法令検索)(いずれも2026年8月28日確認)
あわせて読みたい関連記事
株式会社FAIRセキュリティへのご依頼・ご相談
東京都・神奈川県は全域/埼玉県・千葉県の東京寄りエリアで、施設警備・交通誘導・イベント警備をワンストップでお引き受けします。
- 料金の目安: 交通誘導員1名・日勤 18,000円(税抜)〜(別途 交通費1,000円・税抜)/時期・現場条件により変動
- 対応スピード: 最短当日手配可(空き状況による)
- 年間実績: 約2,000件(人工ベース 約7,000人工)
📞 03-4560-1047(平日9:00〜18:00)/💬 LINEで気軽に相談 → https://lin.ee/iAd3SEl
運営: 株式会社FAIRセキュリティ(東京都公安委員会認定 第30004647号)
関連リンク
- 警備員として働きたい方はこちら → 求人・応募フォーム

この記事へのコメントはありません。